第7回在宅医療連合学会 (長崎, 2025/06/15)
第7回在宅医療連合学会 (長崎, 2025/06/15)
厚生労働省の調査によれば、約60%のかたが、自宅での看取りを希望します。
しかし、この願いは「寝たきり介護」という大きなハードルに阻まれます。
一般の介護者にとって、寝たきりの排泄介護は困難です。結果として、介護施設の逼迫が発生します。介護される側にとっても、オムツ排便の不快や精神的負担は深刻で、それが認知症の発症や進行を加速させる要因となります。
そこで、現状のオムツ介護を補完すべく、寝たきり排泄の改良に取り組みました。最も大きな課題は「におい」です。生活空間に拡がる排便臭は介護の負担を増やし、本人のQOLを大きく損ねます。「におわない」を開発ターゲットに設定しました。
人工肛門のストマを参考に、パウチによるにおい遮蔽を試みました。しかしながら、肛門部は狭く複雑な形状で、肛門部への密着に従来法を適用できませんでした。そこで、肛門から少し離れた範囲を検討して、臀部下の基点と鼠径溝の1点を結ぶ張力を押圧力(密着力)として転換できることに着目しました。シンプルで当たり前なのですが、この分野における新しい密着方法として特許を取得しました。さらに、排便後はパウチ開口部の2本のゴム紐を結び、密閉のままスムーズに廃棄処理に移行する流れです。
オムツ介護には排泄物が肌に密着する不快と清拭時の便臭拡散があります。パウチにニオイを閉じ込めても、便が肌に付着すれば同じ状況になってしまいます。そこで、付着を防ぐ仕組みとして、ベッドの中にパウチを落とし込む落差を設け、排泄物が肛門周囲に留まらない構造を採用しました。現状で利用可能なのは、
穴あきマットレスか、50㎝幅のハーフサイズも穴あきサイドベッドを配置し、移乗して排便する。便付着を最小に留めることができるので、密閉パウチに挿入したノズルからのスプレー水で清拭できます 。
排便清拭後は、トイレに運び、洗浄して糞便をトイレに流します。そのため、パウチ尾部は開閉可能な仕様にしています。簡単な道具だてで低コストです。急な寝たきりでもday 0から対応可能で、介護の負担や悲惨な思いを軽減します。
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現時点で、男性一名で効果を確認しています。さらなる検証を通じて、幅広いケースに対応できるようにしたいと考えています。
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¡ 今後は、介護ベッドのリクライニング機能と組み合わせて、実用性向上を図ります。在宅介護に採用され普及することで、より多くの人が安心して自宅での生活を続けられる社会を目指します。
さらに、この技術は災害時のトイレ不足という課題にも応用可能です。
においを閉じ込める構造は、迅速に増設できる災害トイレに転用できます。パウチ開口部の仕様は同じなので、共通の開発プラットフォームとして活用できます。
今回の発表は、高齢化社会の課題だけでなく、災害列島日本の脆弱性にも対策するものです。日本の持続性に貢献できることを期待しています。